仙台高等裁判所 昭和29年(ネ)356号 判決
控訴代理人は「原判決を取消す、被控訴人は控訴人が別紙添付<省略>の畑に対し小作期間の定めなき小作料一箇年金二百六十七円年末払の小作権を有することを確認すべし、訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする」との判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。
当事者双方の事実上の主張並に証拠の援用認否は、控訴代理人において控訴人が本訴請求においてその確認を求める「耕作権」とは「小作権」の意味である、と述べ<立証省略>たほかは原判決事実摘示(証拠関係を含む)と同一であるからここにこれを引用する。
三、理 由
被控訴人は控訴人の本訴請求が重複起訴の禁止にふれるものであると抗争するので按ずるに、本件において控訴人の主張する所謂訴訟物たる権利関係は別紙目録記載の土地に対する控訴人を権利者とする賃借小作権の存在ということであり、その請求原因は昭和十六年頃右土地を農地として締結されたものとせられる賃貸借契約であることは控訴人の主張自体から明かであるところ、本訴の提起に先立ち被控訴人から控訴人を被告とした建物収去土地明渡等請求訴訟(第一審福島地方裁判所白河支部昭和二二年(ワ)第六号、第二審仙台高等裁判所昭和二六年(ネ)第六八号)が提起せられ、本件土地を含む周辺の土地に対する控訴人の占拠は無権限のものであるとして建物収去土地明渡損害賠償を請求されたこと、控訴人はこれに対し建物所有の為の賃借権を有する旨を主張して抗争したが結局本件土地を含む周辺の土地七一三坪四合二勺については控訴人はこれが占拠につき正当の権限を有しないものであるとして第一、二審共控訴人の敗訴に帰し目下上告審に繋属中であることは当事者間に争なく、成立に争のない乙第五、六号証に徴すれば右別訴においては控訴人は賃借権存在を訴訟物とした反訴の提起をしなかつたものであることを看取することが出来る。
被控訴人は右別訴は前記の土地に対し控訴人が賃借権を有しないことを請求原因において主張したものであるから本訴において控訴人が別個に賃借権の存在確認を請求するのは所謂重複起訴の禁止に背反するものであると主張するのであるが、前掲乙第五、六号証(前示別訴の第一、二審判決)によれば、右別訴の訴訟物をなしているものは前記の土地に対する被控訴人の所有権を前提とした妨害排除の請求権であり、その請求原因となつているものは被控訴人の該土地に対する所有権に外ならないのであつて、控訴人のした賃借権の主張の如きは被告たる控訴人の単なる防禦方法たるに過ぎず、これが別訴の訴訟物又は請求原因を為したものでないことは極めて明白である。而して重複起訴の禁止にふれるものとするが為には後訴が前訴と同一事件であることを要し、同一事件というがためには当事者が同一であること(但しその地位が逆であることを問わない)、判決主文に包含されるべき訴訟物たる権利関係の範囲態様及びその請求原因が同一であること(但し新訴の請求範囲が前訴のそれより狭小であつても、又同一権利関係の存在又は不存在がそれぞれの形で請求されていても訴訟物は同一というべきである)を要するものと解すべきであるから前記の別訴とはその訴訟物のみでなく請求原因をもことにする控訴人の本訴は少しも重複起訴の禁止にふれないものといわなければならない。別訴が本訴より先に被控訴人の勝訴として確定した場合その既判力が本訴にいかなる影響を及ぼすかということは重複起訴の禁止とは別個の問題であつてこれによつて本訴の適否が決定されるべき筋合のものではない(大審院昭和一六年(オ)第一四〇九号昭和一七年六月三〇日言渡判決参照)。
よつて以上と反対の見解に立脚して本訴を不適法として却下した原判決は不当としてこれを取消すべきものとし民事訴訟法第三八八条に従い主文の通り判決する。
(裁判官 板垣市太郎 檀崎喜作 沼尻芳孝)